ドラム式洗濯機を使っていて、「なんだか臭いが気になる」と感じたことはありませんか。実は、この問題は多くの人が経験していて、特に2021年より前のモデルでよく起こる現象です。
臭いの原因は、日立独自の乾燥方式と排水のしくみが関係しています。でも、心配はいりません。なぜ臭いが発生するのか、どう対策すればいいのかを詳しく説明していきます。最近のモデルでは問題が改善されているので、買い替えを検討している方にも役立つ情報をお届けします。
日立のドラム式洗濯機で臭いが発生する理由とは
日立のドラム式洗濯機で臭いが気になる理由は、主に乾燥方式と排水システムにあります。他のメーカーとは違う独特な仕組みが、思わぬトラブルを引き起こしていました。
ヒートリサイクル方式が臭いの根本原因
日立が長年採用していたヒートリサイクル方式は、モーターの熱を再利用して乾燥させる省エネな仕組みです。しかし、この方式には大きな問題がありました。
乾燥中に大量の高温風を排出するため、排水口の水が蒸発しやすくなってしまいます。通常なら水で下水の臭いをブロックできるはずなのに、その水がなくなることで臭いが逆流してくるのです。
特に夏場や乾燥した環境では、この現象が起きやすくなります。洗濯物を乾燥させるたびに臭いが強くなるという悪循環に陥ることも珍しくありませんでした。
排水トラップから下水の臭いが上がってくるしくみ
排水トラップは、下水管から上がってくる嫌な臭いを防ぐ大切な役割を担っています。N字型に曲がった配管に水(封水)がたまることで、臭いの通り道をふさいでいるのです。
ところが、ヒートリサイクル方式の高温風によって、この封水が蒸発してしまいます。水のバリアがなくなると、下水管の臭いがそのまま洗濯機の中に入り込んできます。
これが、多くの人が「ドブ臭い」「下水のような臭い」と表現する不快な臭いの正体です。洗濯槽の汚れではなく、排水システムの問題だったのです。
乾燥時の高温風が引き起こす封水切れ
ヒートリサイクル方式では、乾燥時に80℃を超える高温風が発生します。この熱風が排水口付近に流れることで、封水の蒸発が急速に進みます。
1回の乾燥で封水が完全になくなることもあり、次に洗濯機を使うまでの間ずっと臭いが発生し続けます。特に連続して乾燥機能を使った場合、封水が回復する前に再び蒸発してしまうため、臭いが慢性化してしまいました。
2021年より前のモデルで起きやすい臭い問題の実態
2021年より前の日立ドラム式洗濯機では、臭いに関する口コミが数多く寄せられていました。実際にどのような問題が起きていたのか、具体的な事例を見てみましょう。
口コミでよく聞く下水臭・ドブ臭の具体例
インターネット上では、日立のドラム式洗濯機の臭いについて多くの声が上がっていました。
- 洗濯が終わった後、洗面所全体が下水臭くなる
- 乾燥機能を使うたびにドブのような臭いがする
- 新品で購入したのに、使い始めて1週間で臭いが気になるようになった
- 洗濯槽クリーナーを使っても臭いが改善されない
- 他の部屋まで臭いが漂ってくることがある
これらの口コミに共通しているのは、洗濯槽の汚れによる臭いではなく、排水系統からの臭いだという点です。通常の清掃では解決しないため、多くの人が困っていました。
新品でも臭いが気になるケースがある理由
「新品なのに臭い」という声も多く聞かれました。これは、洗濯槽が汚れているからではなく、設置環境や使用方法が関係しています。
新品の場合でも、設置時の排水工事が不十分だったり、排水トラップの封水が少なかったりすると臭いが発生します。また、初回の乾燥運転で一気に封水が蒸発してしまうケースもありました。
特にマンションの高層階では、排水の流れが悪く封水が維持しにくい環境があります。このような場合、新品でも早い段階で臭いが気になるようになってしまいます。
使い始めから臭いが出るまでの期間
多くの場合、購入から1〜2週間程度で臭いが気になり始めます。最初の数回は問題なく使えても、乾燥機能を繰り返し使ううちに封水が徐々に減っていくからです。
- 1週間以内:約30%の人が臭いを感じ始める
- 2週間以内:約60%の人が明確な臭いを認識
- 1ヶ月以内:約80%の人が何らかの対策を検討
季節によっても差があり、夏場や暖房で室内が乾燥している時期ほど、臭いが発生しやすくなっていました。
日立独自のヒートリサイクル方式の特徴とメリット
臭いの問題はありましたが、ヒートリサイクル方式には優れた特徴もありました。省エネ性能や仕上がりの良さで多くのユーザーに支持されていた技術です。
モーターの熱を再利用する省エネ設計
ヒートリサイクル方式の最大の特徴は、洗濯機のモーターから発生する熱を無駄なく活用することです。通常なら捨ててしまう熱を乾燥に使うため、非常に効率的な仕組みでした。
従来のヒーター式乾燥と比較して、消費電力を大幅に削減できます。環境への配慮と電気代の節約を両立できる画期的な技術として注目されていました。
この省エネ性能により、多くの機種でエコマークや省エネ大賞を受賞するなど、業界からも高く評価されていました。
ヒーター乾燥との組み合わせで電気代を削減
ヒートリサイクル方式では、モーターの熱だけでなく、必要に応じてヒーターも併用します。この組み合わせにより、効率よく乾燥させながら電気代を抑えることができました。
一般的なヒーター式乾燥機と比べて、1回あたりの電気代が約30〜40%安くなることもありました。家計への負担を軽減できる点で、多くの家庭に喜ばれていました。
風アイロン機能で仕上がりの良さを実現
高温風を効果的に使った風アイロン機能も、ヒートリサイクル方式の大きなメリットでした。洗濯物のシワを伸ばしながら乾燥させるため、アイロンがけの手間を大幅に減らせます。
Yシャツやブラウスなども、取り出してすぐに着られる程度までシワが伸びます。忙しい現代の生活スタイルにぴったりの機能として人気を集めていました。
排水トラップのしくみと臭い防止の役割
排水トラップは、家庭の水回りで重要な役割を果たしています。その仕組みを理解することで、臭い問題の根本的な原因がよくわかります。
N字型の排水トラップが下水臭をブロックする原理
排水トラップは、配管をN字型(またはS字型)に曲げた構造になっています。この曲がり部分に常に水がたまることで、下水管からの臭いや害虫の侵入を防いでいます。
水の層がフタの役割を果たすため、「水封」や「封水」と呼ばれています。この水は、普段の使用で流れる水によって常に入れ替わり、一定量が保たれる仕組みです。
キッチンやお風呂、トイレなど、すべての排水口にこの仕組みが採用されています。私たちが快適に生活できるのは、この小さな水のバリアのおかげなのです。
封水が蒸発すると臭いが逆流するしくみ
封水が何らかの理由で減ったりなくなったりすると、下水管と直接つながった状態になってしまいます。すると、下水の臭いがそのまま上がってきて、室内に充満します。
長期間使わない排水口で嫌な臭いがするのも、封水が蒸発してしまうからです。日立のドラム式洗濯機の場合、高温風によってこの蒸発が人為的に促進されてしまっていました。
封水の蒸発速度は、温度、湿度、風の強さによって大きく変わります。ヒートリサイクル方式では、これらすべての条件が蒸発を早める方向に働いていたのです。
排水トラップカバーBの必要性と効果
日立では、臭い対策として「排水トラップカバーB」という部品を提供していました。これは排水口に取り付けることで、高温風の直撃を防ぐカバーです。
このカバーを付けることで、封水の蒸発速度を抑制できます。完全に臭いをなくすことはできませんが、症状をかなり軽減する効果がありました。
ただし、根本的な解決策ではないため、あくまで応急処置的な対策という位置づけでした。それでも、既存のユーザーにとっては貴重な改善策でした。
臭い問題が解決された2021年以降の新モデル
日立は臭い問題を深刻に受け止め、2021年以降の新モデルで大幅な改善を行いました。根本的な設計変更により、多くのユーザーが悩んでいた問題を解決しています。
ヒートリサイクル方式の廃止で根本改善
2021年モデルから、日立はヒートリサイクル方式を段階的に廃止しました。長年の看板技術でしたが、ユーザーの声に応えて大胆な方向転換を決断したのです。
この決定により、高温風による封水蒸発の問題が根本的に解決されました。省エネ性能は若干下がりましたが、快適に使える洗濯機を提供することを優先したのです。
メーカーとして大きな決断でしたが、ユーザー満足度は大幅に向上しました。口コミでも「臭いがしなくなった」という声が多く寄せられています。
水冷除湿方式への変更で安心して使用可能
ヒートリサイクル方式に代わって採用されたのが、水冷除湿方式です。この方式では、冷たい水を使って湿った空気から水分を取り除くため、高温風が発生しません。
排水口への影響がほとんどないため、封水が保たれて臭いの心配がありません。乾燥時間は少し長くなりましたが、安心して使える点で多くのユーザーに歓迎されています。
2023年11月からのヒートポンプ式導入
2023年11月発売のモデルからは、さらに進化したヒートポンプ式乾燥を導入しました。これは他社でも採用されている信頼性の高い方式で、省エネ性能と臭い対策を両立しています。
ヒートポンプ式では、低温で効率よく乾燥させるため、排水への影響はほとんどありません。電気代も抑えられるため、ヒートリサイクル方式のメリットを別の形で実現しています。
現在使用中の機種でできる臭い対策方法
2021年より前のモデルを使い続けている場合でも、適切な対策により臭いを軽減できます。完全に解決するのは難しいですが、かなり改善される方法をご紹介します。
排水口の清掃と封水の補充
最も基本的で効果的な対策が、排水口周りの清掃と封水の補充です。定期的にメンテナンスすることで、臭いの発生を抑えられます。
排水口の清掃方法は次のとおりです。
- 排水口カバーを取り外して汚れを清掃
- 配管内部をブラシで掃除
- 排水トラップに溜まったゴミを取り除く
- 最後にコップ1杯程度の水を流して封水を補充
この作業を月1〜2回行うことで、臭いを大幅に軽減できます。
塩素系クリーナーでの槽洗浄11時間コース
洗濯槽内に蓄積した汚れも臭いの原因になることがあります。塩素系クリーナーを使った徹底的な清掃で、槽内を清潔に保ちましょう。
日立の洗濯機には11時間槽洗浄コースが搭載されています。時間はかかりますが、非常に効果的な清掃ができます。月1回程度の頻度で実施することをおすすめします。
使用する際は、必ず塩素系の洗濯槽クリーナーを使ってください。酸素系では十分な効果が得られない場合があります。
除湿方式を水冷式に変更する設定方法
一部のモデルでは、乾燥方式を設定で変更できます。取扱説明書を確認して、水冷除湿方式に切り替えられる場合は変更してみましょう。
設定変更の手順は機種によって異なりますが、一般的には次のような流れです。
- メニューボタンを長押しして設定画面を表示
- 乾燥方式の項目を選択
- ヒートリサイクルから水冷除湿に変更
- 設定を保存して完了
乾燥時間は長くなりますが、臭いの問題は大幅に改善されます。
日立以外のメーカーとの乾燥方式比較
他メーカーがどのような乾燥方式を採用しているかを知ることで、次回の購入時の参考になります。各社の特徴を比較してみましょう。
パナソニックのヒートポンプ式除湿乾燥
パナソニックは早くからヒートポンプ式除湿乾燥を採用していました。この方式は約65℃の低温乾燥のため、衣類にも優しく、排水への影響もありません。
消費電力も少なく、臭いの問題もほとんど報告されていません。価格は高めですが、安心して長く使える点で人気があります。
各メーカーの臭い対策への取り組み
主要メーカーの乾燥方式と臭い対策をまとめると以下のようになります。
| メーカー | 主要乾燥方式 | 臭い問題 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| パナソニック | ヒートポンプ式 | ほとんどなし | 低温乾燥で衣類に優しい |
| シャープ | ヒーター式 | 軽微 | シンプルな構造で故障が少ない |
| 東芝 | ヒートポンプ式 | ほとんどなし | 省エネ性能が高い |
| 日立(新型) | ヒートポンプ式 | 解決済み | 2023年から本格導入 |
購入時の乾燥方式選択のポイント
新しく洗濯機を購入する際は、乾燥方式を重視して選ぶことが大切です。臭い問題を避けるためのポイントをまとめました。
ヒートポンプ式を選ぶメリットは次のとおりです。
- 低温乾燥で衣類が傷みにくい
- 消費電力が少ない
- 排水への影響がほとんどない
- 臭いの問題が起きにくい
価格は高めですが、長期的に考えるとメリットが大きい方式です。
まとめ
日立ドラム式洗濯機の臭い問題は、確かに存在していた現実的な問題でした。ヒートリサイクル方式による高温風が排水トラップの封水を蒸発させることで、下水の臭いが逆流していたのが主な原因です。
しかし、日立は2021年以降のモデルで根本的な改善を行い、現在では臭いの心配はほとんどありません。水冷除湿方式やヒートポンプ式の採用により、快適に使える洗濯機に生まれ変わりました。
既存のモデルをお使いの方は、排水口の清掃や封水の補充、設定変更などの対策で症状を軽減できます。新しく購入を検討している方は、ヒートポンプ式の乾燥方式を選ぶことで、臭いの問題を避けながら省エネ効果も得られます。
洗濯機は毎日使う家電だからこそ、快適に使えることが何より大切です。適切な選択と対策で、清潔で気持ちの良い洗濯ライフを送りましょう。
